
『キリンライナ 下 明の鄭和艦隊』
著者:添田健一
装画:玉川重機
編集:添田健一
解説:並木陽
発行:行雲流水
頒布:第27回「文学フリマ東京」雲上回廊ブース ア-24
日程:2018年11月25日(日)
価格:900円
判型:A6(文庫本)
頁数:252
部数:150部
「行雲流水」は、添田健一の個人サークル名です。
上巻を含めた購入方法はこのページの下部もしくは、
こちらを参照。
漫画家の玉川重機さんによる上下巻表紙の全景は
こちら。
史上初のキリン遠洋輸送を完遂すべく、アラビアの貿易港市アデンを出港した明の鄭和艦隊分遣隊は、
アラビア海を横航し、インド、セイロン、ベンガル湾を越えて、同盟国のマラッカ王国に到着した。だが、その先には最大の難関マラッカ・シンガプーラ海峡が大自然の脅威で立ち塞がってくる。キリンの訓練士、鄭彩霞に忍び寄る悪意の影。義妹の身を案じる明の皇女、安寧郡主。二人の行動に心を動かした琉球の女武器商人、那美が告げる海峡越えの秘策とは。一方、帰国先の明でも異変が起きていた。15世紀海洋冒険ロマン、佳境へ。 解説・並木陽
【補足】
本作『キリンライナ 明の鄭和艦隊』上下巻は、2015年5月、史文庫さんが、第二十回文学フリマ東京にて、
刊行された歴史小説アンソロジー『世界史C』収録作「アデンにて」を冒頭に含む、その後のアデンから南京までの
大航海を描いた物語です。『世界史C』未読の方も、差し支えなく、お読みできます。
『世界史C』は、2018年現在、頒布終了となっております。
五月二十日。マラッカ寄港六日目。マラッカ沖の洋上にて、軍事演習がとりおこなわれた。日中からはじめられる。
郡主と彩霞も丘の上から見学していた。近くには那美たち、渡海衆の一団もいる。使われている火薬は琉球産の硫黄である。
艦隊の戦船、砲船、火薬船がマラッカ港からも一望できる沖に編隊を組んで、試射をおこなう。砲兵が一斉の号令のもと、海をめがけて発砲する。大気を震わせる大音声が響き渡る。洋上に白い垂直の水飛沫が高くあがる。
試射が終わると、模擬船である巡洋艦があらわれる。敵船である。中央の帆柱のいちばん高いところに赤い小さな帆がたなびいている。戦船の一隊は機動性を駆使して、迅速に編隊を組み、敵船を半円に包囲する。すぐさま、風上のことごとくをおさえてしまう。
片舷斉射の合図。またしても大音声。戦船から焼夷弾が敵船の帆をめがけて一斉に発射される。雨あられと降り注ぐ火の弾が白い帆を射抜き、敵船は大きく揺れた。炎はたちまちひろがり、すべての帆を燃やし尽くしてしまう。黒い煙があがる。敵船は丸裸になり、航行能力さえ失ってしまう。明軍は次なる攻撃である火樽の投下をおこなうべく、備え終えている。すぐに白旗があがった。
郡主は固唾を呑んでこの光景を凝視していた。明軍の航行能力、武力は圧倒的であり、またたくうちに勝敗がついてしまった。これだけ歴然とした戦力差を見せつけられては、航行中の明軍を不意であれ、襲撃しようと考えるものはいないであろう。
演習は陽が傾きかける時刻まで続けられた。洋上には白い砲煙がなおもくすぶり続けている。
(本文28-29ページより)
【購入方法】
『キリンライナ 明の鄭和艦隊』上下巻は、文学フリマ等の即売会で直接販売をおこなっております。
また、下記の書店様で取り扱っていただいております。
・古書 音羽館(西荻窪)
通販での購入。